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相続

相続について

相続にあたっては、相続人の確定、遺産の範囲の確定、遺産の評価、遺産分割方法の確定等、様々な問題が発生します。
これらについての交渉をする場合、相続人本人が他の共同相続人本人と直接交渉をすると、感情的になってしまう場合が少なくありません。弁護士に依頼することで、直接交渉から解放されますし、理性的な交渉が可能になります。
また、弁護士に依頼することで、他の共同相続人に有利な条件であることに気づかないまま、協議や調停を成立させてしまうことを防げます。
また、将来の紛争の未然防止といった観点からは、特に、被相続人がお亡くなりになる前の段階から、遺言や信託等を行うことも視野にいれるべきです。
一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

・相続

「相続」とは、自然人の死亡を原因として財産上の地位を承継させることをいい、「被相続人」とは、相続される人をいい、「相続人」とは、被相続人の相続財産を包括承継することのできる一般的資格を有する人をいいます(個別具体的な事情で、相続人としての地位を喪失する場合があります)。
被相続人の配偶者は、常に相続人になります。
配偶者の他には、被相続人の血族が一定の順位に従って相続人になります。相続人の順位については、第1順位が被相続人の子、第2順位が被相続人の直系尊属(自分より前の世代で直通する系統の親族)、第3順位が被相続人の兄弟姉妹になります。後順位の相続人は、先順位の相続人が存在しない場合に限って、相続人となります。
相続人のうち、被相続人の子又は被相続人の兄弟姉妹が、相続権を喪失している場合は、代襲相続により、別の者が相続人となることがあります。
「代襲相続」とは、被相続人の死亡以前に、相続人となるべき、被相続人の子・兄弟姉妹が死亡し、又は廃除され、あるいは欠格事由があるために相続権を喪失したとき、相続権喪失者の直系卑属(自分より後の世代で直通する系統の親族)が、代襲者として、当該相続権喪失者に代わって、その相続分を相続することをいいます(※相続権喪失者が、被相続人の兄弟の場合は、代襲者となるのは、相続権喪失者の子に限られます)。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(当該期間を「熟慮期間」といいます。)に、相続について、単純承認、限定承認又は放棄をしなければなりません。
「単純承認」とは、相続開始後に行われる、無限に被相続人の権利義務を承継することを内容とする相続人の意思表示をいいます。相続人が単純承認の意思表示をしなくても、相続財産の全部又は一部を処分したときや熟慮期間内に限定承認又は相続放棄の申述をしなかったとき、限定承認又は相続放棄の後に相続財産の全部又は一部を隠匿したり、密かにこれを消費したり、悪意でこれを財産目録に記載しなかったときは、単純承認したものとみなされます。
「限定承認」とは、相続開始後に行われる、相続によって得た財産の限度でだけ被相続人の債務及び遺贈の義務を負担して相続を承認することを内容とする相続人の意思表示をいい、限定承認がされたときは、相続により承継した債務につき、相続人は、相続財産を限度とする有限責任を負います。限定承認をしようとする者は、家庭裁判所に財産目録を提出し、限定承認する旨の申述する必要があります。また、限定承認をした者は、限定承認から5日以内に、相続債権者・受遺者に対して、限定承認をした旨と2か月を下らない一定の期間内にその請求をすべきことの申出をするべき旨を公告する必要があります。
「相続放棄」とは、相続開始後に行われる、相続の効果を確定的に消滅させる相続人の意思表示をいい、相続放棄をした者は、その相続に関しては、最初から相続人にならなかったものとみなされます。相続放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述する必要があります。

・相続分

相続分には、法定相続分と指定相続分があります。
「法定相続分」とは、民法で定められている相続分です。法定相続分は、それぞれ、①相続人が被相続人の配偶者と子の場合は、配偶者が2分の1、子が2分の1、②相続人が被相続人の配偶者と直系尊属の場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1、③相続人が被相続人の配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。配偶者以外の相続人が複数人いる場合は、配偶者以外の共同相続人は、それぞれ、均等の相続分を有します。
「指定相続分」とは、被相続人が遺言で指定する相続分です。被相続人の意思を尊重するため、指定相続分がある場合は、法定相続分に優先します。

・具体的相続分

 法定相続分・指定相続分を基礎として、共同相続人に特別受益や寄与分がある場合に、相続分を修正します。
 「特別受益」とは、相続人が被相続人から、生前であれば婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与、相続開始後であれば遺贈といった、特別な利益を受けることをいいます。相続人の中に特別受益者がいる場合、相続財産の価額に特別受益額を加算したものを相続財産とみなしたうえ、共同相続人の法定相続分・指定相続分を算定し、特別受益者については、その法定相続分・指定相続分から特別受益額を控除した残額を具体的相続分とします。なお、特別受益が遺贈による場合は、相続財産の価額に特別受益額を加算したものを相続財産とみなすことはしません。なお、被相続人は、特別受益による持戻し(相続分修正)を免除することもできます。民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の制定により、被相続人の意思を尊重した遺産分割をするために、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定することになりました。
 「寄与分」とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき、この特別の寄与を考慮して、当該相続人に対して特別に与えられる相続財産への持分のことをいいます。寄与分は、相続人以外の第三者には認められていません。もっとも、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の制定により、相続人以外の被相続人の親族で、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者(「特別寄与者」といいます。)がいるとき、特別寄与者は、一定の要件で、相続人に対して寄与に応じた額の金銭(「特別寄与料」といいます。)を請求できるようになりました。特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。もっとも、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、協議に代わる処分の請求はできません。
 相続開始前・遺産分割前であれば、共同相続人は、自己の相続分を第三者に譲渡することができます(譲渡を受けた第三者は遺産分割手続に関与することができます)。「相続分の譲渡」とは、積極財産と消極財産を包含した遺産全体に対する譲渡人の割合的持分(包括的持分)の移転をいいます。なお、消極財産を包含するということは、被相続人の債務も承継することになりますので、注意が必要です。共同相続人の1人が第三者に対して相続分の譲渡をした場合、その他の共同相続人は、単独で、その価額及び費用を償還して、その相続分を第三者から譲り受ける権利があります。もっとも、当該相続分の取戻権は、相続分の譲渡後、1か月以内に行使する必要があります。
 相続人は、自己の相続分の放棄をすることができます。これは、相続の放棄とは異なり、相続人の地位は維持したままで、自己の相続分のみを放棄する単独行為であり、家庭裁判所での申述も不要となります。
具体的な状況をご相談いただければ、特別受益や寄与分、特別寄与料等について、アドバイスさせていただきます。

・遺産共有

相続人は、相続開始のときから、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継(包括承継)します。相続人が複数人いるときは、基本的に、相続財産は共有状態となります。このような共有状態は暫定的であり、相続財産を構成する個々の権利義務を、終局的に個々の相続人に帰属させるには、遺産分割をする必要があります。「遺産分割」とは、被相続人が死亡時に有していた財産(遺産)について、個々の相続財産の権利者を確定させる手続のことをいいます。
もっとも、このような共有状態に馴染まないと考えられている相続財産については、相続開始と同時に個々の相続人がその相続分に応じて当然に分割承継するため、遺産分割の対象とはなりません。なお、遺産分割の対象とはならない相続財産であっても、共同相続人全員が同意すれば、遺産分割の対象とすることが可能です。
 遺産分割が必要な相続財産としては、現金・不動産・動産等の有体物、預貯金債権、株式等があります。遺産分割の対象とはならない相続財産としては、預貯金債権以外の金銭債権や金銭債務等があります。
預貯金債権については、従来、遺産分割の対象とはならない取扱いだったのですが、最高裁による判例変更があり、遺産分割が必要な相続財産となりました。また、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の制定により、遺産に属する預貯金債権によって生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済等に対応できるよう、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に各共同相続人の相続分を乗じた額(預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とします)については、各共同相続人が、遺産分割前に、単独で払戻しが受けられるようになりました。

・遺産分割

 遺産分割には、指定分割、協議分割の、調停分割、審判分割があります。
遺産分割は、基本的には、①相続人の確定、②遺産の範囲の確定、③遺産の評価、④各相続人の取得額の確定、⑤遺産分割方法の確定、といった流れになります。
遺産分割にあたっては、前提として、相続人を確定させる必要があります。相続人調査のためには、被相続人の出生から死亡までの連続した全戸籍の除籍謄本・改製原戸籍謄本や、相続人全員(被相続人よりも先に死亡した者も含む)の戸籍謄本を揃える必要があります。相続人が兄弟姉妹である場合には、被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。個人で戸籍謄本を収集しようとする際に、被相続人が転籍を繰り返している場合や、被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本も必要な場合は、収集は更に困難になります。

・指定分割

 被相続人は、遺言で分割方法を指定し、又は相続人以外の第三者に分割方法の指定を委託することができます。分割方法の指定があっても、遺言執行者が存在しない限り、協議分割によって、指定と異なる分割をすることも可能です。

・協議分割

 法定相続人が複数いる場合、共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、相続開始後、いつでも、その協議で遺産の分割をすることができます。
 遺産分割協議は、遺産分割協議書がなくても有効です。もっとも、紛争予防の観点からは、合意内容を明確にしておいた方が望ましいですし、法定相続分と異なる分割をする場合の相続税の申告や分割対象に不動産がある場合の不動産登記手続等に、遺産分割協議書は必要となります。
遺産分割協議は、必ず共同相続人全員で行う必要があり、一人でも相続人を欠いた遺産分割協議は無効となってしまいます。

・調停分割

 共同相続人間で遺産分割協議が調わないときや遺産分割協議をすることができないとき、各共同相続人は、家庭裁判所に遺産の分割を請求できます。家庭裁判所の手続としては、遺産分割調停と遺産分割審判がありますが、実務では、まず遺産分割調停を行います。遺産分割調停を経ずに遺産分割審判分割を申し立てることも可能ですが、調停に馴染まないことが明らかな場合を除き、職権で調停に付されるのが一般的です。

・審判分割

 遺産分割調停が不成立の場合、遺産分割調停の申立て時に遺産分割審判の申立てがあったものとみなされ、以後、遺産分割審判手続が始まります。審判申立て後に調停に付され、調停が不成立となった場合は、中止していた審判手続が再開します。

・具体的な分割方法

遺産の具体的な分割方法としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4種類があります。
「現物分割」とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法のことをいいます。
「代償分割」とは、一部の相続人に、法定相続分を超える額の財産を取得させたうえ、他の共同相続人に対する債務を負担させる分割方法のことをいいます。
「換価分割」とは、遺産を売却等で換金(換価処分)した後に、価格を分配する分割方法のことをいいます。
「共有分割」とは、遺産の一部又は全部を具体的相続分による物権法上の共有取得とする分割方法のことをいいます。
基本的な考え方としては、①まずは現物分割を、②現物分割が相当でない場合は代償分割を、③代償分割が相当でない場合は換価分割を、④換価分割が相当でない場合は共有分割を、それぞれ検討します。もっとも、いかなる分割方法を採用するのかについては、基本的には相続人の意思を尊重されます。

・遺言

「遺言」とは、個人の最終意思が一定の方式のもとで表示されたものをいいます。普通方式の遺言は3種類あり、それぞれ、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といいます。
「自筆証書遺言」とは、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自分で書き、押印する方式の遺言をいいます。民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の制定により、自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるようになり、又、法務局における遺言書の保管等に関する法律の制定により、公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度が創設されました。
「公正証書遺言」とは、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言をいいます。自筆証書遺言と比較すると、第三者たる公証人が関与することから、遺言の効力が争われる可能性が低く、遺言書の原本も公証人が保管することから、破棄隠匿をされる可能性も低くなります。また、自筆証書遺言や秘密証書遺言と異なり遺言書の検認も不要です。
「秘密証書遺言」とは、遺言者が遺言内容を秘密にしたうえで遺言書を作成し、公証人や承認の前に封印した遺言書を提出して遺言証書の存在を明らかとすることを目的として行われる遺言をいいます。

・遺贈

「遺贈」とは、被相続人が、無償で自己の財産を他人に与える処分行為のことをいいます。
 「特定遺贈」とは、遺言者の有する財産を具体的に特定して無償で他人に与える処分行為をいいます。特定遺贈が行われると、対象財産は遺産分割の対象外になります。特定遺贈の受遺者は、いつでも、遺贈をほうきすることができます。
「包括遺贈」とは、遺言者が財産の全部又は一部を一定の割合で示して無償で他人に与える処分行為をいいます。包括遺贈が行われると、遺贈された財産の全部又は一定割合は、相続人の一身に専属するものを除き、遺贈の効力発生と同時に、当然に、包括的に受遺者に移転します。包括遺贈の受遺者は、相続人以外の受遺者でも相続人と同一の権利義務を有することから、包括遺贈の放棄をするには、相続の放棄・承認の規定が適用されます。

・遺留分

 「遺留分」とは、被相続人の財産の中で、法律上、その取得が、一定の相続人に留保されていて、被相続人のよる自由な処分に制限が加えられている持分的利益をいいます。
 遺留分権利者は、兄弟姉妹(及びその代襲人)以外の相続人です。
 「総体的遺留分」とは、遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する遺留分割合のことをいい、①直系尊属のみが相続人である場合、被相続人の財産の3分の1が、②それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1が、それぞれ、総体的遺留分となります。
「個別的遺留分」とは、総体的遺留分に法定相続分の割合を乗じたものをいいます。
 遺留分額算定の基礎となる財産は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に、贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して算定します。もっとも、贈与した財産については原則としては相続開始前1年間の間にしたものに限り算入します。例外的に、被相続人が遺留分権利者に損害を加えること知って贈与をしたときは、相続開始の1年より前に贈与した財産も算入します。また、不相当な対価でなされた有償処分についても、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えると知っていたときは、贈与とみなして当該財産も算入します。
被相続人の財産処分の結果、相続人が現実に受ける相続利益が法定の遺留分額に充たない場合でも、被相続人による相続人の遺留分侵害行為は無効になるわけではなく、相続人が減殺請求をなし得るにとどまります。

・遺留分減殺請求

 遺留分減殺請求の対象者は、減殺の対象となる遺贈・贈与の受遺者・受贈者及びその包括承継人となります。
 遺留分減殺請求権は形成権であり、遺留分権利者が、受遺者・受贈者に対する意思表示をすれば足りると解されており、遺留分減殺請求権が行使されると、遺留分減殺請求権に服する範囲内で、遺留分侵害行為(贈与・遺贈)の効力は消滅し、目的物上の権利は、当然に遺留分権利者に復帰します。
 遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅します。また、相続開始から10年の経過によっても消滅します。後者については除斥期間と解されています。
 なお、遺留分減殺請求権を行使した結果生じた目的物の返還請求権については、債権的請求権であれば、10年で消滅時効の援用が可能になります。物権的請求権であれば、消滅時効はありません。

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